データ可視化のアイデア帳

データ可視化にまつわるあれこれ

それでもまだ円グラフを使いますか?

今日のテーマは円グラフ (パイ チャート) です。みんな大好き円グラフ。

レポートや白書、報告書、そういったものには必ず 1 つ以上円グラフが入っています。どこの企業、どの職種であっても可視化と言えばまず円グラフを選んでしまう人もいます。以前から円グラフはわかりやすい/わかりにくいという論争がありますが今回はその論争に終止符を打ちたいと思います。

円グラフはわかりにくい

いきなり結論ですみません。円グラフはわかりにくいです。*1

理由1: 人間の能力

まずひとつ目の理由は、人間の目は角度を測れないから。大きな差がある場合は大きいか小さいかは判別できますが、それがどのくらいの差があるか目で見てわかる方は特殊能力の持ち主と言えます。例えば次の円グラフ、家具家電のどちらが大きいですか? 事務用品は少し小さく見えると思いますが、家具や家電に比べてどれくらい小さいですか?
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理由2: 円グラフは割合 (だけ) 表す

チャートには適切な利用用途があります。*2数の大小を比べるなら棒グラフ、時間の経過を見るなら線グラフ、相関関係を見るなら散布図といった具合です。この辺りの詳細は別の回に譲るとして、円グラフの利用用途について考えてみます。円グラフは言わずもがな、全体に占めるその要素の割合を示します。逆に言うとそれしか表してないんです。それなのに、別の指標も合わせて表現しようとしてしまっている例をよく見かけます。

円グラフの良くある勘違い表現とその代替案

割合を示している (はず)

前述した通り、人間の目は角度を測れません。2 つの項目の大小ならいざ知らず、3 つ以上になると途端に比較が難しくなります。つまり、3 つ以上の項目の割合を示したい場合は別の表現を選択した方がいいということになります。

最もポピュラーな表現は帯グラフでしょうか。棒グラフの長さ全体を 100% として、各要素の割合を示します。
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特に別の項目間で割合を比較したいときに威力を発揮します。
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あまり日本では見かけませんが、ツリーマップという表現も割合を示すのに便利です。特にある程度以上の要素数の割合を示したいときや、カテゴリ→サブカテゴリなど階層関係にある物事の割合を示すときに利用できます。ただし、正確な割合の ”数字” を把握するには割合も表記するなどの工夫が必要になります。
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割合とランキングを示している

要素が多くても、大きい順に並べてるからいいよね!というのがこのパターンです。大きい順に並んでるからと言って、それが本当にそうかは人間では判断できないというのは前述の通りです。
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もし割合とその数字、さらにランキングを示したいなら棒グラフです。もともと棒グラフは数の大小を比べるのに適している上、大きい順または小さい順であることが一目瞭然です。画像ではあえてランキングの数字を入れていますが、これはあってもなくても問題ないでしょう。
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ちなみにこういうグラフでランキングごとに色分けしたりする方いますが、色に意味がなく混乱するだけなのでお勧めしません。*3

割合と絶対量を示している

これは単一の円グラフだと絶対に表現できないものなのですが、ランキングと同じく一緒くたにされているケースがあります。絶対量のラベル表示を付けているからわかりやすいはずだ!とか反論はありそうですが、数字を読ませている時点で可視化としてはイケてるとは言えません。

そんなときのひとつのアイデアが、ツリーマップと棒グラフの組み合わせ。本来ツリーマップは全体の中の割合を把握するためのものですが、棒グラフの長さを 100% に統一するのではなく、実数とすることで、全体の割合と絶対量を一度に表現できるようになります。ただし、ツリーマップの読み方に慣れていなかったり*4、情報量が多いので理解に慣れが必要です。
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素数が少なく、かつ絶対量の比較ではなく雰囲気で量の多寡を見たいという場合には円グラフのサイズを量の多寡で表現したようなグラフもアリといえばアリです。ただし、繰り返しにもなりますが、円の大きさも人間の目では比較できないもののひとつなので、絶対的な量を比較したいという場合には向きません。
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ドリルダウンするためのボタンとしての円グラフ

Excel ではあまり見かけない利用パターンなのですが、こと BI ツールになると良くあるのがこれ。円グラフの要素 (パイ) を選択すると、詳細に跳ぶみたいな作りです。これもやはり要素が少ないときは円グラフでもいいのかもしれませんが、要素が多くなって、なおかつ割合が小さい時などはとてもじゃないけど選択/クリック出来ません。こういう用途の時はもはや正確な量 (割合) の多寡は求められていないので、選択しやすいツリーマップ、棒グラフ、バブルチャート、ヒートマップ等を利用しましょう。

円グラフが有効な時

散々円グラフのダメ出し的なことを書きましたが、円グラフが有効な時もあります。既にチラッと書きましたが、要素が 2 つの時でその割合が拮抗しているときです。例えば (特にアメリカ大統領選などの) 選挙や男女比といったものです。これは帯グラフやツリーマップよりもどちらが大きいかを視覚的に示すことができます。
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ちなみに、円グラフもドーナツグラフも本質的には同じものです。ドーナツグラフは中心の円に文字やその他情報を併記できるので、少し親切な印象を持たせることができます。お好みでどうぞ。

*1:3D の円グラフは言語道断

*2:適切なチャートって何?ってかたはこちらをご参考ください。日本語で網羅性も高い資料です。 github.com

*3:目標値以上だったら色分けするとかはアリ

*4:結構よく見方を聞かれる